リアライン日記・・体のゆがみを取り除くリアライン・コンセプト: ガンコな首の痛み、肩こりでお悩みの方のために・・

2011年3月21日月曜日

ガンコな首の痛み、肩こりでお悩みの方のために・・

先日アオハルクリニック(六本木)での診療で、頸部の痛みの治療として医療機関、治療院、フィットネスクラブ、パーソナルトレーニングなど、数十か所を訪問してまわったという方の治療を担当しました。症状が出たのは何と21年前。この間、治療費だけでも数百万円は使ったとのことでした。

ご本人の治療は途中ですが、今後このような肩や首の悩みを抱えている方、特に解決策が長年見当たらなくて深く悩んでおられる方に少しでも光を届けたいと思い、紹介させていただきます。


病歴
主訴は『頸部痛』。左側の首の付け根の筋肉の痛みです。正確には斜角筋という筋肉がとても強く緊張しています。

この方の治療歴としては、
 ・まったく効果がなかったもの:湿布、牽引、電気治療など
 ・少し一時的な効果があったもの:姿勢改善エクササイズ、ブロック注射
 ・劇的な効果があったもの: な し

「精神的な問題」 と片づけられてしまうのが最も腹立たしいとのこと。私も同感です。精神疾患や心理テストも行わずにこのような所見を下すのは、完全に治療者の怠慢です!

さらに、これまでに50冊以上の健康書を読破され、大変知識も豊富です。症状についても正確に解剖用語を使って説明されます。ご本人の説明も的を得ていて、とても的確に症状を説明されました。

職業はある機械メーカーで、製品の運搬・積み下ろしなど。肉体的なストレスの強い職業です。


身体所見
全体的な身体的な特徴を記します。
 ・体型的はかなりやせておられます。
 ・円背姿勢で、頭部が胸郭に対して前に位置しています。
 ・左右の対称性はわずかに崩れていますが、軽度です。

安静時の痛みは左斜角筋に限局しており、 首の右回旋や右側屈で左斜角筋に痛みが生じます。
疲労すると、肩の後部(三角筋、棘下筋、菱形筋)などにも鈍痛があります。

腕へのしびれはありません。しかし、腕の位置を変化させると、指先に少し症状がみられます。極めて軽度ですが、胸郭出口症候群のような症状があります。

頚椎のヘルニアについては言及されていません。おそらく、これまでの治療歴でそれほど重要視はされていないのだと思います。


問題点
骨格的な問題として、猫背(円背)が強い点があります。その原因としては、
 ①みぞおち付近の肋骨が開かないため、胸郭が全体的に下制(下がった状態)
 ②肩甲骨は外に開き、肩先は前に突き出した状態
 ③頭部は胸郭に対して前方に位置している

そして、これらの状態が固定されていて、可動性が低下しています。つまり、悪い姿勢で固まってしまっている状態といえます。

これらの姿勢の異常に対して、私が手を使って理想に近いアライメントに修正してみたときの斜角筋の状態を確認すると、その緊張はわずかに軽減されますが、圧痛はほとんど変化しません。つまり、アライメントの修正は直接症状の変化には結びつかない可能性があります。

そこで、治療方針としては。
 ①アライメントの修正(円背の修正)
 ②上位肋骨(斜角筋の付着部)の可動性改善
 ③斜角筋そのものの可動性、滑走性の改善
としました。


治療経過
①アライメントの修正(円背の修正)
 胸郭全体のアライメントを変えるのは容易ではありません。胸郭の下部の可動性を取り戻し、息を吸うときや後屈するときに、下部胸郭が横に開きやすい状態を作り上げる必要があります。これには、肋骨周りの皮膚も悪い姿勢の胸郭に貼りついてしまっているので、皮膚を十分に動かし、肋骨間の可動性を取り戻す必要があります。

 下部の胸郭が開きやすくなると、上部の胸郭は挙上しやすくなります。つまり、肋骨を十分に動かして、楽に息を吸うことができるようになります。これによって、通常は肋骨周辺、肩甲骨の筋が緩んでくれます。
 
 しかし、この方の場合はほとんど肩周辺の筋の緊張に改善はみられません。考えられるのは、肩甲骨と胸郭との間にある滑液包の癒着、そしてランドセル症候群(肩の上の皮膚の付着)です。

 これに対して、肩の上で、肩甲骨から鎖骨にかけての皮膚を滑らせる治療をしました。これにより、肩甲骨の上部が胸郭から少し後方に解放され、指先を胸郭と肩甲骨の間に滑り込ませやすくなります。
 
 次に、肩の後方の緊張があるため、肩の水平屈曲の制限があります。つまり、肘を顎に向けて引っ張った時に、肘と顎の間に30cm以上の距離があります。肩の後ろが硬くなると、これが肩甲骨を外に引き出してしまいます。三角筋後部線維を棘下筋から上方に滑らせる治療を行うと、この緊張が改善して、上記の問題が解決されました。
 
 
②上位肋骨(斜角筋の付着部)の可動性改善
 肩甲骨が胸郭から解放されると、上位肋骨の可動性が劇的に改善しました。これにより、肩甲骨を介した上位肋骨のモビライゼーションを行いやすくなり、その効果も得られてきます。
 
 具体的には、仰向けで、胸の上で両手を組んだ状態から、できるだけ両手を天井に向けて突き出した状態(肩甲骨を前に突き出した状態)で、天井に小さな円を描くように両手を動かします。徐々にスムーズな円を描けるようになるので、徐々に円の直径を25cm位にまで広げます。これにより、肩甲骨に押されて肋骨が徐々に動きを取り戻します。
 
 
③斜角筋そのものの可動性、滑走性の改善
 ここまでの治療で、肋骨が動きを取り戻し、斜角筋もわずかに緩んできましたが、まだ押したときの痛みは残っています。ここから先は、斜角筋そのものが、周辺の他の筋や組織から解放されて自由に動けるように、滑ることができるように治療を進めます。

・斜角筋は前、中、後と3つに分かれるので、それらの間をリリースして筋間の滑りを改善。
・斜角筋の前には頚椎の前の筋(椎前筋)、そして胸鎖乳突筋があります。これらの筋との間をリリースして、頚椎を伸展させるときに斜角筋が頚椎に対して後方に滑るように促します。
・斜角筋の表面にはリンパや細かい深頚があり、これらがある程度位置を保つようにゆるい結合組織があります。これらの結合組織が斜角筋の筋膜上で滑るように促します。

上記の治療を進めることにより、斜角筋は周囲の組織から解放されて、柔軟性を取り戻しました。この時点では、頚椎の回旋や側屈、そして指で押した際の痛みはほぼ消失していました。


効果の持続性について
今回の1回の治療の経過は上記のとおりです。少し長めに約1時間かけて上記を進めました。その効果の持続性については現時点ではわかりませんが、患部そのものは確実に改善に向かうと思います。

心配な点としては、21年間もこのように頚椎、肋骨、肩甲骨が固定されていて、その状態で胸郭周辺のすべての筋が緊張のバランスを保ってきました。今回、斜角筋の緊張を緩めることに専念した治療を行いまいたが、その結果として緊張のバランスが崩れてしまいます。その結果、肩甲骨の下方、腰部などにこれまで感じていなかった不快感が生じる可能性は高いと思われます。

胸郭周辺の筋の緊張を全体的に緩める方法として、ストレッチポールを使った「ソラコン」というエクササイズがあります。ソラコンは、胸郭の可動性と対称性を再獲得させるための運動ですので、まさに今後の胸郭全体の緊張の緩和には必要な運動といえます。

また、頚椎椎間板ヘルニアや胸郭出口症候群のような神経学的な症状がある場合は、話はもっと複雑になります。首から手にかけて神経に沿って、神経そのものの滑りを阻害するような圧迫や癒着がないことを確認し、もし問題があれば神経が自由に滑ることができる状態にしなければなりません。

------------------------------------------------------------------------------------------------------
◆詳しくは・・・・
 4月末発売のコアセラピーの理論と実践(講談社 2011)の第2章、第9章)を参照してください。
------------------------------------------------------------------------------------------------------


ReaLine リアライン ~からだのゆがみを科学する~ www.GLABshop.com

0 件のコメント:

コメントを投稿