リアライン日記・・体のゆがみを取り除くリアライン・コンセプト: 6月 2012

2012年6月19日火曜日

ACL再建術前リハビリテ-ションについて

ACL再建術前リハビリテ-ションについて
    

1991年のShelbourneの論文以来、受傷から3週間程度経過してから再建術を行うことが定説化されています。これほど明確に一つの論文が医学を変えた例は珍しいのではないかと思うくらい。
   
ところで、その常識はあまりにも定説化されて、疑問が投げかけられなくなっているようにも思います。
  
もしも、受傷後3-4日の間に、
 1)フル可動域獲得
 2)大腿四頭筋セッティングが十分可能
 3)正常歩行可能
が得られてしまったらどうします?
 
   
もちろん受傷から3-4日で炎症が完全に鎮静化するとは思えない。しかし、arthrofibrosisのリスクは0とは言えないが、上記の3つの条件がそろっており、かつ術後に適切に可動域の管理ができれば、可動域の回復もほぼ約束されている。
  
   
そんなことを考えながら、昨日ACL受傷後3日目の術前リハを行いました。
  結果として、
 可動域は0(左右差なし)~135°
 セッティング可能(四頭筋の張力60%程度)
 独歩可能(多少の跛行有り)
 疼痛なし
となりました。あと1―2日で腫れが完全に引けば正座もできる状態です。受傷から1週間は早すぎるかもしれないが、2週間程度で十分にOpe可能ではないかという印象です。

術前リハビリテ-ションと手術のタイミングについて書きました。そこで、疑問となるのは受傷直後に可動域を確実に回復させる具体的な方法は?ということでしょう。炎症があって、痛みや不安感が強い時期に、いわゆる他動的な力を加える受動的な可動域訓練は、筋のスパズムを増強させ、恐怖を植え付けるだけになってしまいます。私は、基本的にセラピストによる他動的な可動域訓練はほとんど行いません。
  
自動運動ではどうか? 自制内での訓練であれば、ある程度は自分自身で許容できる範囲となるので、恐怖感はそれほどでもないでしょう。しかし痛みがあれば、可動域を広げるような効果はそれほど期待できません。
    

   
 では、受傷から2-3日の時点で何をするか。
基本方針として
 1)膝関節のアライメントを整えること、
 2)アライメントを悪くする軟部組織を徹底的に弛めること
 3)アライメントを改善するための自動運動を行うこと
の3点に集約されます。
   
ACL損傷直後はハムストリングスのスパズムもあって、下腿外旋位となります。そのまま伸展方向に力を加えても外旋が増強し、伸展できたとしても異常な外旋位になってしまいます。それを防ぐため、まずは2)の軟部組織リリースをじっくりと行います。具体的には下腿外旋を促す原因であるハムストリングス、大腿二頭筋、腸脛靭帯から皮下脂肪をはぎ取るようなカワハギを行います。特に膝窩部から大腿後面遠位部のカワハギは重要です。
    
ある程度リリースできたら、膝屈曲90°で下腿内旋を繰り返し、それから下腿内旋位を保って膝伸展・屈曲の自動運動を繰り返します。これでほぼ完全伸展できます。
   
    

次に屈曲については、端坐位などで外側広筋から腸脛靭帯にかけての皮下脂肪リリースを行い、さらには四頭筋間(大腿直筋と外側広筋間など)の筋間リリースを行います。これらを丁寧に行うことで、屈曲時の膝蓋骨の外方偏位が改善し、屈曲可動域が回復していきます。
 
    

そこまでくれば
 4)下腿内旋位での膝屈曲・伸展運動
 5)伸展の限界での大腿四頭筋セッティング
 6)屈曲の限界での患者自身による他動屈曲、
へと進みます。実際には1)、3)、4)はほぼ同じことを行うことになります。通常は、1―2回の治療で歩行時の痛みが消失し、快適な術前リハビリテ-ション生活を送ることができるようになります。

  



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