今日紹介するのは距骨下関節不安定症です。
痛みや機能障害に特徴がありますが、その特徴を知らないと病院でリハビリを行っていてもしばしば見過ごされます。見過ごしてはいけない特徴について紹介しましょう。
【症例】
15歳、女性、剣道選手
【病歴】
・小学生から左足関節捻挫を繰り返している。
・2か月前から踵(アキレス腱周辺)に痛みが生じ、徐々に増悪した。
・1週間練習休止して症状軽減したが、練習再開したところ、踵から下腿三頭筋、
前脛骨筋など下腿全体に疼痛が拡散。
・診断名: シンスプリント
【症状】・炎症症状を認めない。
・疼痛
圧痛:踵骨外側・内側、下腿三頭筋、前脛骨筋、下腿遠位前面
運動時痛:他動背屈、他動底屈にて下腿周囲の筋に疼痛。
他動背屈でアキレス腱付着部周辺に疼痛。
歩行:ヒールコンタクト、ヒールオフのタイミングで疼痛が著明。
疼痛が下腿全体に分布し、足関節の他動運動において敏感に疼痛が出現。
特に背屈時の下腿三頭筋の痛みが顕著。
足底から踵骨を距骨に圧迫しながら背屈させると疼痛軽減。
・不安定性
内反(+)、前方(+)
・可動域 制限なし
ただし、背屈5度以降は軟部組織性の抵抗感あり。
【分析】
・距骨下関節不安定症により、踵骨両側の痛みが出現。その後、痛みを我慢して
運動を続けた結果、下腿筋全体のスパズム出現したと推測。
・距腿関節の背屈制限(抵抗感)により、距骨背屈が抑制され、その結果距骨下
関節へのストレスが増強すると推測。
【治療】
・他動運動中の抵抗感解消を目指す。
①アキレス腱、下腿遠位部内側、腓骨筋周辺の皮膚リリース
②屈筋支帯周辺のリリース(距骨の後方滑り込みを確保)
③テーピング
(足底から舟状骨と立方骨を挙上するように弾性テープでスターアップを貼り、
下腿前面で交叉)
・治療結果
下腿皮膚リリースにより、距腿関節の背屈時の抵抗感が消失。健側とまったく
同じ他動背屈の抵抗感となった結果として下腿三等筋のスパズムが解消。
テーピングにより、片足ジャンプでの疼痛消失。
まとめ
このように、距骨下関節の不安定性は、足関節捻挫の後遺症として発症します。
特徴的な歩行時痛があり、数週間から数か月の安静でも疼痛が解消せず、下腿
全体に疼痛が分散します。下腿三頭筋のスパズムが著明で、筋損傷、コンパート
メント症候群とも間違えられます。
治療上は、可動域を回復させるだけでは不十分で、その抵抗感までを完全に正常
にまで回復させる必要があります。距骨の底背屈をその周辺の皮下組織の癒着が
一切邪魔しない状態を作ることが重要です。
捻挫の後遺症で、距骨下関節不安定症に苦しむアスリートはとても多く存在します。
是非とも病態の特徴を覚えておいていただき、見過ごさないようにしてください。
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